『バビロン』は汚い、酷い!? 酷評の理由や魅力を正直にお伝えします!(ネタバレあり)
早速ですが、デイミアン・チャゼル監督の最新作『バビロン』の鑑賞直後の感想をお伝えします。
一言でいうと、脳天を突き抜けるような刺激的な映画で、刺激が大好きな私としてはかなり高評価ですが、過激な内容なので、酷評したくなる気持ちもわかります。
クエンティン・タランティーノ監督の『ワンスアポンアタイム・イン・ハリウッド』やマーティン・スコセッシ監督の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を彷彿とさせるような刺激的な映画なので、これらが好きな方にはおススメです!
反対にエロ・グロ・汚物・暴力等の刺激がダメな方にはおススメできない内容となっています。
特にチャゼル監督の過去作品『ラ・ラ・ランド』が好きで、本作品に興味を持っている方は、あまりにもテイストが違うので、覚悟してください。
そんなわけで、本作品の酷評の理由や魅力などを正直に書いていきます!
(本記事は、ネタバレを含みますので、ご注意ください。)
本記事は、以下の内容で構成されています。
酷評の理由を分析!
それでは、早速、本作品が酷評されている理由を分析してご紹介します!
汚すぎる!(ドラッグ、エロ、グロ、汚物、暴力、、、)
酷評のほとんどの理由がここに集約されているのではないでしょうか。
本作品は、エロ、グロ、ドラッグ、汚物、暴力等のシーンが多く、全体として汚い内容となっています。
・酒池肉林のドラッグパーティ
・その辺でセックスは当たり前
・ネズミを食う巨漢
・ゲロ
・ウンコ
・小便
・スラング
挙げたらキリがありません。
それぐらいこの映画は汚い場面が多いのです。
本作品は、チャゼル監督の最新作でもあり当然注目の的となっているため、日本のメディアでも当然のようにしっかりと宣伝されており、また、年齢指定が「R15+」にとどまっています。
このため、例えば、チャゼル監督の過去作品である『ラ・ラ・ランド』に感銘を受けて劇場に足を運ぶ若い方などからしたら、予想以上に汚くて酷評したくなるのも分かるといえます。(特にカップルなどで観に行くことをお勧めできるものではありません。)
また、本作品は、サイレント映画からトーキー映画へ移行する時代の人々を描いており、そのような時代設定や映画史を楽しめる程度の教養のある人間を対象にする一方で、実際には見るに堪えない汚い映像が多いので、このギャップにより酷評が多くなってしまうことが考えられます。
しかし、後述するとおり、汚さは、本作品が刺激的で魅力的であるために必要な要素であり、また、チャゼル監督の映画に対する愛や皮肉が表れているとも言えるかと思います。
長すぎる!(3時間超)
本作品の上映時間は、3時間5分と、なかなかの長さになっています。
このため、普段から映画を見る習慣のない方などにとっては、本作品を長く感じることがありうるかと思います。
また、本作品は、ラストにこれまでの上映内容を想起するシーンがあったり、内容がてんこ盛り過ぎて一見意味のなさそうなシーンが続いたりと、少し冗長ともとれる部分が多いのも事実かと思います。
このため、長すぎると酷評をされているのではないでしょうか。
監督のエゴ・メッセージ性が強すぎる!
本作品は、映画についてのメッセージを長尺のセリフでブラピに語らせたり、映画のラストでは、見方によっては、さも映画史を振り返ったり、芸術性をアピールしたりしているようにも見える描写があり、少し熱感がありすぎて引いてしまう方もいらっしゃると思います。
特にチャゼル監督の過去作品である『セッション』や『ラ・ラ・ランド』では、比較的ドライに物語を進めていくような感覚であったため、そのあたりのギャップに違和感を感じ、酷評をしたくなる方もいたのではないでしょうか。
ギャップが凄すぎる!
本作品は、『セッション』や『ラ・ラ・ランド』で有名となったチャゼル監督の作品であるため、同じような音楽映画を期待して、本作品を観られることにとって、本作品のような過激な内容では、大きなギャップを感じる場合があるかと思います。
また、過激な内容の割に、通常のアカデミー賞有力候補作品のような形で、大々的に宣伝されているため、そのような作品を期待して、本作品を観られる方としては、同様に大きなギャップを感じる場合があるかと思います。
それでも面白い! 本作品の魅力
以上が本作品の酷評の理由についての分析です。
しかし、冒頭に記載したとおり、私は本作品のことを高く評価しています。
ここからは、本作品の魅力を紹介していきます!
美しい音楽
私が今更言うことではないですが、チャゼル監督の作品だけあって、やはり音楽のクオリティがとても高いです。
本作においても、チャゼル監督の過去作品である『セッション』や『ラ・ラ・ランド』と同じ作曲家のジャスティン・ハーウィッツが音楽を提供しており、一つ一つのシーンの音楽が非常に魅力的です。
本作は、チャゼル監督の過去作と比べても、音楽が強くシーンを導いているような印象でした。
このため、一つの映画を見ているだけのはずが、遊園地で数々のアトラクションを満喫したような満足感(と疲労感)があります。
とても魅力的なサウンドトラックをぜひ聞いてみてください。(私も本記事を書きながら鬼リピしています。)
強い刺激
本作品の何よりの特徴は、エログロドラッグ汚物暴力など、他の映画にはなかなかない、刺激的な内容だと思います。
本作品を見ると、ジェットコースターに乗っているような、快感を得ることができます。
また、映画というのは、富や名声、権力など汚いものが集まってできており、そのような部分を描くべきであるし、作品というのは、所詮、監督の排泄物であったり、ドラッグやセックスによる快楽というものとあまり変わらないというチャゼル監督の、映画に対する愛と皮肉が表れているともいえるかと思います。
『ラ・ラ・ランド』の監督であるチャゼル監督が、富と名声を得て、このような過激な作品を作り上げるというのは、予想外で面白いですよね。
また、終始展開が読めず、常にドキドキしながら楽しむことができました。
このような作品は決して多くはないので、本当に貴重で有難いです。
個人的に一番興奮したのは、映画セットで男性陣を誘惑するために踊り狂う、ネリー(マーゴット・ロビー)が、シャツの胸元をズラして、おっぱいを見せるシーンです。(笑)
ネリー役のマーゴット・ロビーは、前記した刺激的な映画である、クエンティン・タランティーノ監督の『ワンスアポンアタイム・イン・ハリウッド』やマーティン・スコセッシ監督の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』にも出ていますので、本作品で気になった方は、ぜひ見てみてください。(いずれもU-NEXTで見ることができます。)

オマージュ(『雨に唄えば』)
本作品は、ハリウッドにおけるサイレント映画からトーキー映画への時代の移ろいを描いており、時代設定からも予想されていたとおり、ジーン・ケリーの『雨に唄えば』が明確にオマージュされています。
中盤でピンクのカッパを羽織って踊ることを躊躇するジャック(ブラットピット)が可愛らしかったですよね!
また、ラストシーンでも、映画館で『雨に唄えば』を見て、ネリーやジャックとの出会いから、自分の半生、未来の映画までを想起して涙する、主人公のマニー(ディエゴ・カルバ)が印象的でした。
本作品の良いところは、トーキー映画へ移ろう時代において、名声を失っていく、ジャックやネリーなど、生き残れない側の人間のことを描いていることかと思います。
『雨に唄えば』は、主人公側は特に苦労なくトーキーへの移行に成功して勝利を収めるご都合主義的な部分がありましたが、本作は、生き残れない側の人間の苦労を描いていることで、非常に深みがあります。
これは、チャゼル監督の過去作品である『セッション』や『ラ・ラ・ランド』における切ない心理描写に重なる部分があるかと思います。(いずれもU-NEXTで見ることができます。)

チャゼル監督ならではの深み
チャゼル監督の過去の作品である『セッション』や『ラ・ラ・ランド』は、人間の切ない心理を描いており、非常に魅力的でした。
本章では、そんなチャゼル監督の作品ならではの深みを感じた印象的な場面を簡単にご紹介します。
- ゴキブリ
映画界のスターであったジャック(ブラットピット)は、トーキー映画への移行に対応できず、徐々に名声を失っていきます。
一方で、ジャックが売れていたサイレント時代に、ジャックのことを持ち上げ、甘い汁を吸い続けた批評家は、トーキーへの移行にあたり、あっさりジャックのことを批判する側に回ります。
批評家は、自身のことをゴキブリと称し、成功するのは、暗闇でこそこそ隠れながら地道に生きている側であることを、ジャックに伝えます。
ただし、ジャックのことをただ批判するわけではなく、スターであったジャックの名声や映像は未来に永遠に残り続けることを教えてくれます。
ハリウッドの光と影を感じる印象的な場面です。
- 映画セット
続いて、映画セットです。
サイレント時代は、音声を録らないため、映画セットは騒がしく、各々好き勝手に自由に楽しくやっています。
他方で、トーキーに移行すると、音声を録る必要があるため、常に余計な音を立てないようにという緊張感があり、また、声のボリュームを調整するなど、自由が失われていきます。
このため、自由奔放さを売りにしていたネリー(マーゴット・ロビー)は実力を発揮することが難しくなり、名声を失っていきます。
- 刺激を求めた先にあるもの
本作で私が最も手に汗握った緊張したシーンが、マフィアに誘導されて、LAの穴の中に入るシーンです。
前半の酒池肉林で楽しくやっていた頃とはうってかわって、LAの穴の中は、やっていることや雰囲気が胸糞悪いです。
ネズミを食べる巨漢に興奮している輩には、やはり引いてしまいますよね。
退屈の中で、人々が刺激を求め続けるのは、当然と言えば当然ですが、刺激を求め続けた先では、過度な快楽に溺れ、現実感がなくなってしまうことを忘れてはいけないということを考えさせられます。
まとめ
上記の通り、本作品は全体として汚い場面が多いので、酷評されてしまうことも分かりますが、チャゼル監督作品ならではの美しい音楽や心理描写、そして本作の一番の魅力である強い刺激など、見どころ満載の作品です。
クエンティン・タランティーノ監督の『ワンスアポンアタイム・イン・ハリウッド』やマーティン・スコセッシ監督の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を彷彿とさせるような刺激的な映画なので、これらが好きな方にはおススメです!
また、チャゼル監督の過去作品である、『セッション』や『ラ・ラ・ランド』も本当に素晴らしい作品ですので、これを機にぜひご覧ください。(いずれもU-NEXTで視聴することが可能です。)